畳は、日本人にとって欠かせないものだ。新しい畳の匂い、そこに寝転んで体を伸ばせば、心が和む人も多いだろう。
しかし、高温多湿の日本では、畳に生えるカビが大きな悩みのひとつ。そもそも畳に生えたカビは放置すると見た目が悪いだけではなく、その胞子が体内に入りこみ、人体に悪影響を与えてしまうので、放置は絶対に避けたい。
では、畳に生えたカビをどう処理すれば良いのだろうか。
畳のカビは湿気が原因なので、畳をエタノール(アルコール)か、酢水で拭くなどの処理方法がある。これなら自分でも簡単にできるが、その他手軽だが、やってはいけない処置もある。正しい畳のカビ退治と、生えないようにする工夫をご紹介しよう。
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この記事読むことで理解できること
畳のカビはなぜ生えるか
青々とした新しい畳は本当に清々しいものだが、残念なことにカビが生えやすいという難点がある。その理由は、畳が新しいうちは材料である「いぐさ」の中に水分が残っているため。いぐさ自体に湿気が多く残っているので、環境によってはカビが生えやすくなる。
特に新調して時間が経たない1〜2年目の畳にはカビが生えやすい。だが、この時期をうまく切り抜ければ、だんだんカビは生えなくなっていく。それは畳に含まれている水分が少しずつ蒸発して、いぐさ自体が乾燥してくるからだ。
ただ、新調して1〜2年が過ぎたらまったくカビが生えないかというと、そうとも言えない。やはり客間など普段はあまり使わない部屋、常に閉めきったままの通気の悪い部屋では、少し時間が経って新しくなくなってもカビが発生しやすい。
その理由は、カビの好む条件である。その条件とは湿度・温度・酸素・養分の4つで、これらが揃いさえすれば、カビは発生しやすくなる。
中でも温度と湿度は重要な要素で、温度(部屋の場合は室温)が20~30℃、湿度75%以上という環境が継続的に続いた場合、畳表の表面にカビが目に見える形で現れてしまうのだ。
日本の自然環境は、どうしても湿度が高くなる。特に梅雨から夏にかけては湿気が多く、高温で20〜30℃に日なる日が多いし、湿度も高く、不快指数が高くなる蒸し暑い日々が続く。これは、カビにとって最も棲息しやすい環境だろう。
では冬は大丈夫なのだろうか。実は冬は、外気は低く乾燥しているが、現代の日本の家屋は気密性が高く、冬の朝、結露が窓や壁にできるほど室内は湿度が高くなっている。
さらにエアコンなどの暖房で屋内を暖めていると室内の温度も上がり、真冬でもカビの生えやすい環境が生まれる。寒いからと言っても注意が必要だ。
自分でできる畳のカビ退治と防止策
自然素材の「いぐさ」を使用している畳には本来、部屋の湿気を調節する能力を持っている。ただ、湿度の高い季節には、湿気をどんどん吸収して湿度の高い状態となり、しかも目にホコリやごみが溜まっていると、カビやダニが繁殖しやすい状態になってしまう。
また、素材の「いぐさ」はそれ自体がカビの養分となるのに加えて、織り込まれているため、織り目に沿ってカビが根を張りやすく、カビの巣窟になりがちと言える。
5〜6月、9〜10月は、特にカビが生えやすい要注意の時期。カビを発見したら、すぐに除去し、通風を良くして十分に乾燥させることが大切だ。
カビの除去方法
自分で行う、基本的なカビの除去方法の手順をご紹介する。その際は、以下の手順を守って行うとすっきりときれいにできる。除去するときには人にもペットにも無害のエタノール(アルコール)を使用する。エタノールは揮発性が高いのでシミになりにくい。
なお、エタノールには無水エタノールと消毒用エタノールの2種類があり、無水エタノールは濃度99%、消毒用は濃度80%。一見、無水エタノールの方が殺菌効果は強いように感じるが、無水の状態ではほとんど殺菌効果はない。
もしも無水エタノールしか手に入らない場合は、無水エタノールが80%の濃度になるように水で薄める。その際、水道水では変質しやすいため、精製水を使用すると良い。
<畳のカビ除去の手順>
①天気の良い日に行う
必ず窓や戸を開けて、通気を良くしてから行おう。
②エタノールを霧吹きなどで吹きかける
エタノールをスプレーした後、しっかり乾かす。
カビが酷く生えているときは、ブラシやタワシなどでカビの生えているところを擦って、できるだけカビを取り去る。このときに力を入れ過ぎてカビの胞子が飛散しないようにゆっくりと行う。
③エタノールが揮発してカビが乾いたら、掃除機をかける
エタノールはアルコールなので、揮発性があり、比較的すぐに乾いてしまう。エタノールをかけたカビの部分が乾いたら、掃除機をかけてカビを吸い取る。なお、掃除機の使用は生きたカビ胞子の飛散を防ぐために「殺菌後」のみ使用すること。
④さらにエタノールをかけて消毒
きれいになったら、今度は消毒のために再度エタノールを吹きかける。
⑤エアコンをドライモードまたは暖房にして、畳と部屋全体を乾燥させる
エタノールは揮発していずれ乾いてしまうが、多少は時間がかかるので、エアコンのドライモードか暖房にして、室内と畳を乾燥させよう。
昼間、日当たりの良い部屋なら、そのまま窓を開けて乾燥させても良い。
なお、エタノールの代わりにお酢を使っても良い。
お酢を使う場合は、原液のままではなく、薄めて使おう。なぜなら原液のままでは酸が強すぎていぐさを痛めてしまうし、色ムラができてしまうからだ。
<お酢を使う場合の手順>
①バケツいっぱいの水(10リットル程度)に酢大さじ2〜3杯程度を入れる
バケツの水に、お酢を大さじ2〜3杯くらい入れて、よく混ぜる。これでお酢の薄め液のできあがり。
②お酢の薄め液を布に浸ませて、固く絞る
お酢を溶かした水を布に含み、もう水が出ないくらい固く絞る。しっかり絞らないと、畳が水分をたくさん含んでしまうので注意が必要だ。
③畳の目に沿って拭く
お酢の薄め液を含んだ布巾で、畳の目に沿って拭く。 なお、あまり落ちない場合は、もう少しお酢の量を増やす。
④拭き終わったら、しっかり乾燥
拭き終わったら、しっかり乾いた布でもう一度拭く。その後、エタノールと同様に、エアコンのドライモードか暖房で部屋を乾燥させ、畳を乾かす。
2-2:やってはいけないカビ取り法
カビを見つけると、水で拭いたり、乾いた雑巾などで拭いたりしがち。また、カビは叩くとホコリのように胞子が舞い上がって、一見カビが取れたように見える。しかし、これらはすべてやってはいけないカビ取り法だ。
また、カビを除去する際に、カビキラーなどのカビ専用の薬剤で拭く人が多いが、これも良くない。
カビキラーなどは主成分が塩素系の薬剤なので、消毒効果がある。しかも塩素系なので漂白作用もあり、カビによって黒ずんだ目地やビニールクロスのカビなどは、きれいにすることができる。
しかしそれを畳に使うと、繊細な天然素材であるいぐさを傷めてしまう上、畳の表面が漂白されて、色ムラができる。
また薬剤が畳にしみ込んで、私たちの体にも悪影響を与えるので、使用は控えた方が良い。
日常の防止策
畳に生えたカビは初期段階であれば比較的簡単に除去できる。
しかし、生える前に生えない工夫をした方が見た目も健康にもずっと良いだろう。
そのために、日常的に実践したいのは、最低でも年に一度は、畳を天日で干すこと。表、裏ともに日光を当てて、両面を叩いてから掃除機をかける。
次に除カビと防カビを行ってから、元の位置に戻す。その際は、畳の裏側に位置を示すナンバーが書かれているので、畳を上げるときには番号と位置をチェックしてメモしておこう。
また普段から、留守にする場合も和室は閉め切らず、風通しを良くしておく。さらに日常的に掃除をきちんとして、固く絞った布などできれいに拭いて常に清潔にする。これらを実践することで、カビの発生はかなり防ぐことができる。
自分では無理だと思ったら専門業者に依頼しよう
自分でカビを取ろうとしたが、あまりに広範囲に生えているケース、畳の目の中までびっしりとカビが生えていて、エタノールやお酢を使っても、とても取り切れないと思われる場合は、専門業者に依頼するという選択もある。
もし、カビを除去する業者というと、ハウスクリーニング業者を思い浮かべているなら待っていただきたい。ハウスクリーニング業者はおすすめできない。
カビを除去するにはカビ取りの専用薬剤と、カビに対する専門知識が必要だ。カビ取り専門業者など聞いたことがないなどと言わず、カビ取り専門業者に依頼することをおすすめする。
現在、インターネットなどで検索すると、たくさんのカビ取り専門業者が見つかる。そういう業者の紹介サイトもある。そういったところから、気になる業者に声をかけてみよう。
ネットなら、そのサイトからダイレクトに業者に連絡ができるだろう。その際、ハウスクリーニング業者ではなく、必ずカビ除去の専門業者を選ぼう。なぜなら除去方法も使用する薬剤も違うからだ。専門業者は、人にも動物にも害のない薬剤を使用して除去できる知識と経験を持っているからだ。
まず選んだ数社にメール等でコンタクトを取り、状況を説明して見積もり等を依頼する。
その前に、業者選びには以下の5つの点をチェックしておきたい。
①必ず現場の下見に来る
カビ取りの料金は、業者によってほぼアウトラインは決まっているだろう。しかし、素人で手に負えないカビはどんな状況か、電話やメールだけでは詳細を把握するのは難しいはず。正しい除去を行うために、必ずカビの生えている現場を見に来る業者を選ぼう。
②現場を見て、処置方法を説明
現場チェックの際、どういう状況かを仔細にチェックし、カビの種類や発生の原因などを分析。どのように処置をするのか、使用する薬剤などについて、分かるように説明してくれるのが良い業者だ。
③質問に快く回答する
カビの原因は湿気だが、カビの生え方はその場所それぞれで異なる。原因などについて、こちらが分からないことは何でも質問に答えてくれるなら、その業者は信頼できる。
④適正な見積もりをくれる
現場のチェック後、翌日くらいまでに、適正な見積もりを提示してくれると安心だ。適正な見積もりとは、どんな作業でいくらなど、詳細な作業内容と金額が明記してあるもののことだ。
⑤保証期間があるとより安心
カビの除去後に万一、またカビが生えてしまったとき、保証期間を設けている業者なら安心感がある。また、除去後も定期的にメンテナンスのサポートをしてくれるなどがあれば依頼してもより安心できる。
以上の5つのポイントをチェックし、数社の見積もりを比較する。「この業者なら安心してお願いできそうだ」と思ったらその会社に、カビ除去を依頼しよう。
ちなみに、料金の目安はいずれも1平米当たり、以下の通りだ。
なお、これらは畳だけではなく、一般的なカビの発生についての金額であり、その他の状況やカビの生え具合等によって変わる。
カビ除去作業: 1,200円〜
殺菌作業: 600円〜
防カビ作業: 900円〜
『人、建物に優しいカビ取り専門業者による無料見積り/カビラボ』
カビの基礎知識
カビは基本的に湿気のあるところで増殖する生態がある。胞子が空気中にバラまかれて、胞子の落ちたところで増えていく。
カビの種類
カビは地球上の微生物の約36%を占めていて、その種類は3万種とも言われる。
麹菌などもカビの一種だが、人間の暮らしに害を及ぼすカビも多い。
畳に生えるカビは、主だったものは以下の通り。
※アオカビ・クロカビなどの和名は、学術的な分類とは異なる。
カタカナの表記が正確な名称。
・青カビ(ペニシリウム属)
基本的にペニシリウム属のカビを指す。
畳だけではなく、パンや餅など、食品に生えるカビとしても身近。青緑色のコロニー(群)を作るのが特徴で、大体150種類ほどに分類される。この青かび=ペニシリウム属は人間の生活の中でも利用されており、チーズの熟成にも使われる。具体的にはゴルゴンゾーラ・スティルトン・ロックフォールなどのブルーチーズに用いる。また、抗生物質であるペニシリンも、この青カビから作られていたことがある。
・黒カビ(クラドスポリウム)
黒っぽいカビの総称で、代表的なカビはクラドスポリウム。
畳に生えるだけでなく、空気中に漂っているカビの中で最も多いのがこのカビだと言われる。浴室の壁やエアコンの吹出口付近に出るカビとしても馴染みが深い。有機物全般に見られるカビで、食品にもよく生える。
・麹カビ(アスペルギルス属)
基本的にアスペルギルス属のカビを指す。畳にだけ生えるのでなく、さまざまな食品などの有機物に生え、どこにでもいるカビ。アスペルギルス属の一部が味噌・醤油などの発酵に使われる。多様な色をしているので、色で見分けるのは不可能。日本固有の和室に敷く畳に生えるからなのか、麹カビは「国菌」に指定されている。(理由は味噌や醤油に使われるから)
・その他のカビ
赤カビ(フザリウム)・アズキイロカビ(ワレミア)などがある。
フザリウムは樹木菌とも呼ばれ、赤い色素を出す仲間がいることから赤カビと名づけられている。住環境内で見ることはあまりなく、畳に生えるのも稀。
ワレミアは畳やじゅうたん以外にも、高い糖度を持つ食品から検出されることが多い、あずき色のカビ。
まとめ
畳にカビが生えたときは、発見後の初動が大事だ。カビキラーなどの塩素系薬剤は使わず、エタノール、酢水などで拭き取ろう。なお、胞子が舞ってしまので、から拭きは厳禁だ。水拭きもさらにカビを広げてしまうのでNG。
除去した後は必ず、畳はもちろん部屋中を乾燥させる。日常的な注意としては、部屋を閉め切らず、つねに通風を良くしておくことが大切だ。
カビは基本的に自分でも対処できる。しかし、大量のカビが発生して、素人の手による除去が難しいと思えるときは、早めにカビの除去を専門にしている業者に依頼するのが賢い選択と言える。
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